日本には、ワクチン接種後に有害事象が発生した場合、医療機関または製薬企業が、その症例情報を国に報告する制度があります。また、製薬企業が接種群の情報を収集し、その後に有害事象が発生した頻度をカウントする調査を実施しています。
これらの仕組みは、副反応の疑いがある有害事象を早期に発見(シグナル検出)する目的においては非常に有用です。しかしながら、症例報告や、接種群のみの情報では、その有害事象がワクチンによって引き起こされたものなのかどうかという因果関係の検証はできません。
VENUS (Vaccine Effectiveness, Networking, and Universal Safety)Studyは、ワクチンの有効性と安全性を検証可能なデータベースを開発すること、および、国や国民の意思決定に資するエビデンスを生み出すことを目指し、2021年にスタートした研究事業です。
日本では2013年にHPVワクチンを定期接種化した直後に、安全性に対する社会的懸念の高まりを受けて、厚生労働省は積極的勧奨を中止しました。その結果、2020年における日本の接種率は世界保健機関(WHO) 加盟国において最低レベルに位置づけられています。
この背景には、欧米諸国には整備されているような、承認後のワクチンの有効性と安全性を科学的に検証可能な体制が、日本には整備されてこなかったことが大きく影響しています。
2021年にはHPVワクチンの積極的推奨が再開され、また、全国民へのCOVID-19ワクチン接種が進められている中で、国民一人一人が、これらのワクチンを接種するかどうかを自ら判断することのできる科学的かつ客観的なエビデンスの創出が求められています。

日本には、ワクチン接種後に有害事象が発生した場合、医療機関または製薬企業が、その症例情報を国に報告する制度があります。また、製薬企業が接種群の情報を収集し、その後に有害事象が発生した頻度をカウントする調査を実施しています。
これらの仕組みは、副反応の疑いがある有害事象を早期に発見(シグナル検出)する目的においては非常に有用です。しかしながら、症例報告や、接種群のみの情報では、その有害事象がワクチンによって引き起こされたものなのかどうかという因果関係の検証はできません。
VENUS Studyでは、ワクチン接種した集団と接種していない集団の両方のデータを収集し、解析可能なデータベースを構築します。それぞれその集団における背景情報や、その後の疾病発生の情報を用いることで、ワクチン接種との因果関係があるのかどうかを科学的に検証します。

九州大学が実施しているLIFE Studyが母体となり、自治体から直接収集した医療レセプトデータ等と予防接種台帳やHER-SYSをリンケージし、個人情報を削除し、研究解析用データセットに加工したデータベースを開発します。さらに、このデータベースを用いて、ワクチンの有効性と安全性に関するエビデンスを創出します。
(データの詳細はLIFE studyのホームページ参照)

本プロジェクトは、日本のワクチン関係者において悲願だったデータベース構築を達成することで、真っ暗な夜中を経て、夜明けに光輝く金星(明けの明星)のような存在になれるようにという意味を込めて「VENUS」と命名されました。
また、ロゴの丸いフォルムは金星を表しています。そして、金星の中にVENUSの頭文字であるVは、日本のワクチン疫学の新しい時代を切り開くイメージを表しています。

・AMEDワクチン開発推進事業 [2021-2023] 「保健・医療・介護・行政データを統合した大規模データベースを活用したワクチンの有効性・安全性の検証に資する研究開発」
・NCGM国際医療研究開発費 [2021-2022]「リアルワールドデータを活用した新型コロナワクチンの安全性評価研究および ワクチンの有用性・安全性評価のためのモニタリングシステム」